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橋下府政「支持率82%」を支えるブレーン集団

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 八二・三%。就任一年を前に読売新聞が実施した世論調査で、橋下(はしもと)徹・大阪府知事への驚異的な支持率が示された。産経新聞は八一・六%、テレビ大阪で府民百人に街頭アンケートを実施したところ、実に九十三人が「支持する」と答えた。
確かに大阪は「お笑い百万票」と言われ、元タレントの西川きよし氏を参議院議員に、横山ノック氏を府知事にした土地柄だ。では、橋下氏への支持も、これらの先例に類するものなのかといえば、答はおそらくノーだ。橋下氏への強烈な支持を裏打ちするものは、一体何なのか。



東京では報じられない「背景」

 昨年二月六日の初登庁日。「大阪府は破産会社。民間なら給料カットは当たり前」。橋下知事は、職員四百五十人を集めた訓示で、顔を紅潮させながら過激な言葉を次々に口にした。言葉の向こう側にあったのは、十年連続赤字という不名誉な財政状況を放置してきた職員に対する不信感だった。
 矢継ぎ早に繰り出される“檄”に、ある中堅職員は、深いため息をつきながら、天井を仰ぎ見た。訓示後に開かれた幹部会議でも、橋下知事の勢いは止まらなかった。「大阪府のために私と死んで下さい」。会議後、ある幹部は「いよいよ“橋下劇場”が始まったよ」と肩をすくめた。
 過激な言葉は、この後も“橋下劇場”のシナリオに欠かせないものとなった。財政再建のため事業見直しに着手した際、「基本的に図書館以外のハコものは必要ない」と言い放ち、府が長年、補助金を支出する大阪センチュリー交響楽団には「インテリぶったクラシックよりお笑いの方が文化。楽団はファンを獲得する努力をしていない」と冷たく突き放した。
 こうした発言の背景には、マスコミに取り上げられることで府民の関心を引き、問題の速やかな解決にあたれる、という意図があった。現に、これらの発言は府民の支持を得て、知事は職員の給与カットや、文化施設の統廃合などを次々に打ち出し、就任半年までに千百億円の収支改善への道筋を付けた。結果、大阪府は二〇〇九年度予算で十一年ぶりに赤字から脱却する見通しとなったのである。
 一方で、この手法の弱点が次第に浮かび上がった。それは、在京メディアと在阪メディアの「温度差」である。
 在阪メディアは、就任直後から橋下知事の一挙手一投足を報じ、「なぜ過激発言に至ったのか」と、その背景や経緯に触れるニュースを展開したが、在京メディアでは、そうした背景が切り離され、過激な発言「のみ」取り上げられることがほとんどだった。
 たとえば、筆者が所属するテレビ大阪のキー局・テレビ東京が制作する全国ニュースでも、まさにそうだった。となれば、関西以外の視聴者や読者には「あの橋下さんが、また過激な発言をした」という印象しか残らなくなる。
 こうした「弱点」が見事に表れたのが昨年八月、東京都内で開かれた「大阪府議会フォーラム in 東京」でのことだった。
 これは橋下知事と、自民、民主、公明、共産の府議会主要四会派の幹事長が、大阪の窮状を訴え、国に税財源移譲を求めるためのものだったが、肝心の国会議員や、霞が関の官僚の参加はほとんどなく、知事与党である自民の国会議員は、知事が熱弁を振るっている前を通り過ぎ、会場を出る始末。
 報道陣も在阪メディアばかりで、その日の夜、東京の宿泊先で各局の夜のニュース番組に目を凝らしたが、ついに関連報道を目にすることはなかった。
 出張議会の終了後、囲み取材に応じた橋下知事も、こうした雰囲気は感じ取っており、「まだまだこれから」と強気の姿勢を見せたが、同行したある府議は「在京メディアは“報道に値する知事”と判断しなかったのだろう。要は、知事は過激発言ばかりで、中身がないと。知事のプライドはかなり傷つけられたようだ」と話した。
 そんな中、あるプロジェクトチームが九月に府庁内で発足する。初会合には、経済財政諮問会議の民間議員として小泉改革を支えた本間正明近畿大教授や、大阪市の市政改革で辣腕を振るった“脱藩官僚”の上山(うえやま)信一氏、改革派知事として知られた前三重県知事の北川正恭氏など、錚々たる面々が顔を揃えた。
 橋下知事は「府政運営でみなさまの知恵をぜひ借りたい」と頭を下げた。この面々は「チーム橋下」と呼ばれることになる。

ターゲットは霞が関に

 これ以降、橋下知事の過激発言にある変化が起きる。それは、発言を向ける相手だ。それまでは、府庁職員や府内の団体など身内へのものがほとんどだったが、それが対外にシフトしていった。その一番のターゲットは霞が関。選んだ問題は、国の直轄事業への負担金制度だった。
 この制度は、国が直接実施する道路やダム、港湾などの公共事業で、「地方も利益にあずかる」との理由から、道路法や河川法などに基づき、建設費の三分の一、維持管理においては四五%を地方が負担する仕組みだ。
 橋下知事が負担金に目を付けたきっかけは、国の淀川水系河川整備計画案。滋賀県大津市の大戸川ダムを含む三つのダム計画の総事業費およそ二千七百四十億円のうち、約四百億円を府が負担せよというものだった。しかし、府の建設事業費が十年前から半減している中、負担金の総額は二〇〇五年度以降、増加。理由を尋ねても答えられなかった担当職員に、橋下知事は「なぜおかしいと思わないのか。こんなの、普通おかしいでしょう」と声を荒らげたという。
 橋下知事は、三つのダムの流域にある滋賀県の嘉田(かだ)由紀子知事、京都府の山田啓二知事と秘密裏にメールや電話などでやり取りし、最終的には三重県の野呂昭彦知事も巻き込んで、四府県知事共同で大戸川ダム計画に「NO」を突きつけた。
 さらに返す刀で、〇九年度予算で支払いが義務づけられていた国の直轄事業負担金のうち、建設事業費を二〇%、維持管理費を一〇%それぞれカット、全体で約四十億円を削減した予算案を二月府議会に提出した。もちろん、これらの過程で、「霞が関は諸悪の根源」「霞が関を転覆せねば」などの過激発言の発信も忘れなかった。
 この橋下知事の“霞が関への反乱”を後押ししたのは、紛れもなく「チーム橋下」だ。その中心となったのが、ブレーン中のブレーンとも言われている上山氏。負担金への疑問を橋下知事が真っ先にぶつけたのも上山氏だ。
 上山氏は、霞が関(旧運輸省)出身ゆえ、霞が関の弱点を知り尽くしていた。「霞が関は地方が束になって言ってくると持ち堪えられない」「国の直轄事業負担金に疑問を持つ知事は多い。必ず同調者が出てくる」。橋下知事は上山氏のアドバイスに従い、記者会見など事あるごとに、負担金への疑問を口にした。
 作戦は的中した。「大阪だけ特別扱いできない」と、当初は静観していた霞が関だが、国が直轄事業として実施している北陸新幹線の工事追加負担を巡り、新潟県の泉田裕彦知事が「増額の詳細な理由が不明」として支払い拒否を表明。さらに佐賀県の古川康知事が九州新幹線の工事追加負担を拒むと、福岡県の麻生渡知事もこれに続き、激震が走った。

 橋下知事は、全国の知事の同調を見届けた上で、満を持したように二月二十日、単身で国土交通省に乗り込んだ。金子一義大臣に対し、前口上もそこそこに、「直轄事業負担金制度は国と地方の奴隷制度。地方は奴隷。奴隷を解放してほしい」と制度廃止を訴えた。就任わずか一年、タレント弁護士出身で過激発言が売りものだった橋下知事は、四十七都道府県の知事の代弁者となった。
 金子大臣は「国と地方の役割分担を含め、制度のあり方を考える」と見直しを表明。「満額(回答)に近い内容」(府幹部)となり、会談後、橋下知事は「大臣の近くにいた事務方は渋い顔をしていたが、大臣は『制度を見直す』とはっきり言ってくれた」と“勝利宣言”をした。

 ブレーンの一人、本間教授は、かつてテレビ大阪の単独インタビューで「裏表のない正義感あふれる性格ゆえ、時に思ったことがすぐさま口に出ることがある。その若さを良い方に導いてあげるのも私の仕事」と話していた。
 ノック元知事になくて、橋下知事にあるもの。それは、まっとうな政治をしようという、そもそもの意思に加え、政策面や道徳面で助言するブレーンの存在とも言える。
 府庁内には、「ブレーンに偏重しすぎて、職員は蚊帳の外」といった批判も渦巻くが、橋下知事は意に介するどころか、「僕と同じ感覚を持つ職員を民間から新たに五十人くらい登用する」といった構想をぶち上げるなど、「チーム橋下」のさらなる拡充を目指す。
 折り返しの就任満二年に向け、走り始めた橋下知事。次の一手は何か。上山氏は最近、橋下知事にこんなアドバイスをしたという。「国の天下り法人への負担金の見直しに力を入れるべき。不満を持つ地方は多い。これでさらに霞が関は動揺する」。

筆者/テレビ大阪報道部記者・平岡直也 Hiraoka Naoya フォーサイト2009年4月号より
※各媒体に掲載された記事を原文のまま掲載しています。

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これにはギョヘーといいましたね。

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