2025/06/03 07:53
マーシャル諸島は、2025年の大阪・関西万博にナショナルパビリオンを出展し、気候変動への取り組みや伝統文化を世界に発信します。この小さな島国のユニークな歴史と、困難に立ち向かう決意に注目が集まっています。
ユニークな歴史と苦難
マーシャル諸島の歴史は約2,000年前に始まり、16世紀以降はスペイン、ドイツ、日本、アメリカといった列強に支配されてきました。
第二次世界大戦後、マーシャル諸島はアメリカの信託統治領となりました。1946年から1958年にかけて、ビキニ環礁などで67回の核実験が行われ、多くの住民が被ばくや故郷の喪失という苦しみを味わいました。
最大の課題 ― 気候変動
マーシャル諸島の平均標高は約2メートルです。地球温暖化と海面上昇により、国土の大部分が水没の危機にさらされています。マーシャル諸島の人々は世界のCO₂排出量にほとんど寄与していませんが、先進国の排出によって高潮や洪水、食料不安などのリスクに日々直面しています。
決して屈しない精神
マーシャル諸島は350億ドル規模の適応計画を策定し、自国民の命と文化を守るため、世界に支援を呼びかけています。万博のパビリオンでは、気候変動対策や伝統的な航海術、エコツーリズムの取り組みを紹介し、逆境の中で未来を切り拓く姿を発信します。
「国土と文化を守るため、国際社会で声を上げる」――これこそがマーシャル諸島の「決して屈しない」精神の象徴です。
グッドウィンド・シルクさんは、マーシャル諸島パビリオンのスタッフです。
「ラコエ(lakwe)」――愛を意味するこの言葉の精神で、彼とそのコミュニティは、日々の厳しい現実にも前向きな姿勢と決意で立ち向かっています。
マーシャル諸島大学の4年生であるシルクさんは、学生活動のリーダーを務め、現在は万博のスタッフとして自国の文化や現状を来場者に紹介しています。
また、彼は気候変動への意識向上にも積極的に取り組んでいます。例えば、マーシャル語で「あなたの家」を意味する「ジョジクム(Jo-Jikum[*1] )」のメンバーでもあります。ジョジクムは島全体のクリーンアップや気候変動ワークショップ、コミュニティ映画上映会などを通じて、若いマーシャル諸島の人々が気候変動に対応できるよう支援する教育団体です。
「私たちの文化や生活様式は環境と深く結びついています。それらを失えば、私たち自身のアイデンティティそのものが危機にさらされることになります。」
―― マーシャル諸島 気候問題特使 キャシー・ジェトニル=キジナー[*2]
シルクさんは、学生リーダーとして自分のコミュニティの状況を少しでも良くするために、常に努力し、声を上げ続けていると話してくれました。マーシャル諸島は日本とのつながりも深く、日本統治時代を含めて、「あみもの(編み物)」のような日本語が日常的に使われている言葉として残っています。また、日本は放射線の影響への対応や魚市場の建設、病院の整備、漁業や医療分野への無償資金協力など、さまざまな支援を行っています。
人口わずか3万8千人の小さな国でありながら、彼らが直面している課題は、世界全体が共有する避けては通れない問題であると強く感じました。(グローバルコミュニティー主宰 宮崎計実)
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