2019/06/20 00:50

社員の想いを実現したい ーベトナム人エンジニアが現地責任者にー

編集者より

社員の想いを実現したい ーベトナム人エンジニアが現地責任者にー

(初めてベトナムエンジニアを面接に行った時のメンバー)

中小製造業が集積する大阪府東大阪市で、操業70年を迎える中農製作所。
近年は、発注元の大手企業の海外展開などあり、変化を求められているが、中農製作所は、
外国人スタッフを大事にして、海外進出を見事に果たし、初年度から黒字を達成。

(西島社長)

ベトナム人の現地責任者を育てたその経緯や、スタッフのモチベーションをどのようにして上げているのかなど、西島社長にお聞きした。

ベトナム進出とスタッフの採用、教育の経緯は?

2008年に、中農製作所は初めてベトナムにエンジニアの採用に出かけた。2003年から技能実習生として受け入れは、始めていたが、一時的なものではなく、正社員として働くエンジニアを育てる必要があると先代の社長が判断。そこで、大卒のエンジニアとして4人のベトナム人が採用された。

変化があったのは、2014年。丁度、西島社長が社長に就任する前の話だが、『10年後の会社を考える』研修が行われ、各社員がそれぞれの夢を語った。その中で、ベトナム人社員から出てきたのが、『ベトナムでの工場建設と事業進出』だった。

彼らの慣れない日本で奮闘する姿をまじかで見ていたので、経営陣はその夢をいつかは実現して上げたいという気持ちになった。

しかし、多くの中小製造業では、コスト削減、事業拡大に海外進出が必要と考えてはいるが、実際はうまく進んでいっていない企業も多い。その一番の理由が、「海外展開を推進できる人材がいない」ということだが、中農製作所には、すでに日本で頑張っているベトナム人社員がいる。彼らの夢をかなえることで会社の将来も明るいものになるかもしれないと、漠然とだが西島社長は希望を持っていた。

展示会出展がベトナム進出のきっかけに!!

(ベトナム展示会)

(初めてのベトナム展示会(リー副社長、製造部長、ナム社長、西島社長)

そんな想いを胸に、2014年にJETROの支援もあり、ベトナムの展示会に初めて出展した。多くの日本企業も参加していたが、会社の説明は現地の通訳を介して行われていてたので、あまり専門的な話はできていないようだった。しかし、中農製作所は、ベトナム人社員が、自分たちが作っている製品だと誇りを持って来場者に、説明に当たったので、該当ブースは非常に人気が高かった。そのやり取りを見ていた西島社長は、ベトナム進出にも大きな手ごたえを感じ、帰国した。

ベトナム進出のプロジェクトは、2014年の社長就任後に、本格的に始まったが、会長に就いた先代社長の中農氏から、投資額は最低限で抑えるように指示された。
そのことを踏まえて、西島社長がベトナム人スタッフとも話し合い、『外注を活用し、付加価値の高い製品を作る』という方針を定めた。

通訳経験が、経営者へのいいトレーニングになった

ベトナムに駐在事務所を開いて、しばらくは、外注先の開拓に時間を注いだ。具体的には、中農製作所のベトナム人スタッフが、現地の工場に通い、スタッフに直接、技術を教え、安定して納品してもらえる体制を整えた。
外注先の教育などを含め、現地事務所の運営は、西島社長が直接、現地に入って、ベトナム人スタッフを通訳にして行っていた。
しかし、彼らの日本語のレベルもまだまだで、最初は、コミュニケーションも大変だったが、現地事務所を盛り上げていきたいという気持ちは共有していたので、時には、衝突しながらも、意見をぶつけ合って、想いを一つにしていった。
その時の様々な通訳経験が、彼らの将来の経営者としてのトレーニングにもなったようだ。

ベトナム進出に関して、他の日本人スタッフの反応は?
これからのベトナム・日本の協力体制は?

(2018年の展示会 ベトナムの会社スタッフ全員)

もし、会社にもベトナムの社員もおらず、単なるコストの削減を目的として、日本人の社員に、『ベトナム進出』の話をしても中々受け入れられなかったであろう。
当時は、リーマンショックの影響もあり、そんな余裕があれば、日本での福利厚生に力を入れてほしいと日本人社員も考えたであろう。
しかし、一緒に同僚として、汗を流していた実習生や社員の『ベトナム進出』の夢となると、そのことに関して、反対する者はいなかった。

そして、今では、正社員採用した2名は現地で責任者になっており、あとの2名も、日本で、日本人の部下の教育もする現場責任者になっている。この4人はモチベーションも非常に高く、お互い切磋琢磨しながら、自分の技術を磨いていった。
採用や教育も、ベトナムと日本で協力しながら進めており、日本勤務の研修生に、現地の工場で使える技術を日本で教え、ベトナムに帰国した際に、現地の工場で働くようになっている。

(70周年記念 ナム社長 西島社長 リー副社長)

立ち上げから間もないベトナム子会社は既に、年間1億円以上の売上高になるという。将来は、ベトナムの社長の出身地であるダナンに進出する予定で、その資金も、日本からではなく、現地法人であげた利益で調達する。ダナン大学出身者も多いので、故郷に錦を飾ろうとみんな張り切っているそうだ。

このように、思い切った、ベトナム人エンジニアの正社員採用で、海外展開も無理なく行いことができた中農製作所の例は、様々なところで成功事例として紹介されているが、一番印象に残ったことは、西島社長はじめ、会社を上げて、ベトナム人社員たちを仲間として尊重し受け入れているところだ。事業の成功は、お互いの信頼関係が大切だと改めて認識した。

 

㈱中農製作所 公式HP  http://www.nakanos-s.co.jp/

(グローバルコミュニティー編集長 宮崎計実)