2024/04/19 11:07

アニリール・セルカン氏にインタビュー

特集
11ヶ国語を操る宇宙飛行士候補、
アニリール・セルカンさんに直撃
訪問先:アニール・セルカン氏
訪問者:蒋 華さん
いま世界じゅうで科学技術は著しく進歩しています。私たちがいつも見ている空のはるか向こうの宇宙。その宇宙に旅行することも現実になりつつあるといっても過言ではないでしょう。そんな中、2004年トルコ人初宇宙飛行士候補に選ばれたアニリール・セルカンさん。現在は東大大学院の研究室で助手をしています。
彼が、今年の6月に出版した初の書き下ろし著書「宇宙エレベーター」が巷で評判となっています。話題の人物を訪ねるため、私たちはいざ東大へ!中国人大学生・蒋華さんが直撃インタビューしました。
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セルカン氏の面白いお話に思わず聞き入る蒋さん
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蒋華…宇宙飛行士の訓練プログラムで大変だったことは?
セルカン…色々なものがありましたが、自国の訓練としては、暗いプールの中で3日間過ごしたことが身体的につらかったです。精神的には、自分の意思でないことでも、一国の代表としてやらなければならないときですね。

蒋華…トルコでは、セルカンさんに憧れて宇宙飛行士になりたい子どもが多いそうですね。
セルカン…子どもたちにそう言ってもらえるのはすごく嬉しいです。でも彼らには、「宇宙飛行士」という将来の夢だけにとらわれず、科学や歴史、宇宙など様々な分野の学問を勉強して、自分の視野を広げてほしいと思います。私も本来の専門分野は建築・工学ですが、実は日本史が興味深くて好きですよ。

蒋華…セルカンさんはトルコ人?国際人?
セルカン…国籍上、紙の上ではトルコ人です。実際はトルコに住んだことはないのですが、とても愛着をもっており、海外で働くことでトルコのためになると信じています。しかし私は、宗教・国籍・肌の色で人を差別しませんし、そのようなことはあってはならないと思うのです。その点では、自分はれっきとした国際人だと考えています。

蒋華…一番幸せな時間は何をしているときですか?
セルカン…お酒を飲んでいるときです。だいたいのお酒が好きですが、特に梅酒が好きですね。でも、ビールと紹興酒だけは苦手です。
ビールに関してはドイツにいた頃、周りにいたビール好きな大人たちのお腹が、ぽっこり出ていた思い出があります。(笑)

蒋華…日本にいる留学生たちにメッセージをお願いします。
セルカン…私も過去は留学生だったので、気持ちはよくわかります。来日する選択をしたのは自分自身だから、日々チャレンジをしながらできるだけ楽しく過ごしてほしいと思います。自分の国を離れて暮らすのは、つらいこともあるけれど絶対に良い経験になるからです。
また勉強ばかりでなく人に会ったり、読書をしたり、バランスを保つことがたいへん大事なことです。研究者は、何日間も研究室に泊まりこみをするイメージがあります。しかし実際は、長い間ダラダラと取り組むのは効率よくありません。私も夜の7時までには研究室を後にしています。人との出会いも、大切にしてほしいですね。




座右の銘…「無」
無事是貴人(むじこれきにん)という禅語が元の語です。
幸せも悲しみも感じない「無」の世界では、問題が起こることがありません。
「無」はいわば「バランス」と同等のものなので、自分の心を「無」にすることができれば、必ず成功ができると信じています。


セルカンさんの著書
宇宙エレベーター(大和書房・定価2100円)
第一章から第五章にわたって、宇宙や時間、原子など様々なテーマで「旅」が綴られている。専門書のような小難しさは一切なく、宇宙や物理にさほど興味のない人でもさらりと読める内容。サンタとトナカイのクリスマス当日の労働や、独自の十一次元宇宙など、気になる人は要チェックな一冊!

アニリール・セルカン

1973年ドイツ生まれ。トルコ国籍。大学卒業までをドイツ、スイスで過ごし、1995年イリノイ工科大学建築学科卒業、1997年プリンストン大学数学部講師に就任。1999年バウハウス大学建築学科修士課程終了。2003年東京大学大学院工学系研究科建築学専攻博士課程を修了、日本宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙科学研究本部宇宙構造物工学研究室講師を経て、現在、東京大学大学院助手、エール大学客員教授などを務める。2001年NASAジョンソンスペースセンター宇宙構造・材料系客員研究員として宇宙飛行士プログラムを終了、2004年トルコ人初宇宙飛行士候補に選ばれる。8ヶ国語+古代語3ヶ国語の計11ヶ国語を操る。また学問だけでなく、トルコのスキー代表選手に選ばれた経験をもつなどスポーツに精通する面も。専門は建築・工学。